アレルギーとは

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病原体(細菌、ウイルス 等)などの異物が体内に侵入しようとすると、これを体外へ排除しようと撃退してくれるシステムを免疫反応といいます。この働きに何らかのミスが生じるなどして、侵入を排除するだけでなく、自己を障害させてしまうということがあります。この状態にあるのがアレルギーです。

この場合、免疫反応が過剰になり、くしゃみ、鼻水・鼻づまり、目の充血、流涙、皮膚のかゆみ、発疹などの症状がみられるようになります。これをアレルギー症状といいます。上記の症状がみられる病気のことを総称して、アレルギー疾患と呼びます。

主なアレルギー疾患

気管支喘息

気道(気管支)において慢性的な炎症があり、この炎症により気道が狭くなり、わずかな刺激でも咳が止まらなくなったり、呼吸困難や喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)が繰り返し現れる状態を気管支喘息と呼びます。特に夜間から早朝にかけて、症状が発生しやすく、全身を使って呼吸をしなければ息苦しさを感じることがあります。咳が一度出始めると、止めるのが非常に難しいことがあります。
気管支喘息はアレルギー反応で、代表的なアレルゲンは、ハウスダスト、ダニ、花粉、犬や猫などのペットの毛などです。

治療について

喘息の発作がある場合は、短時間作用性吸入β2刺激薬(気管支拡張剤)の吸入をおこないます。効果があまりみられない場合は、ステロイドの投与をおこないます。また発作がみられない際に行う発作予防治療法では、吸入ステロイド薬が中心となります。

食物アレルギー

食物がアレルゲン(抗原:アレルギーとなる原因物質)となって、様々なアレルギー症状を引き起こしている状態を食物アレルギーといいます。原因となるアレルゲンは、年齢によって異なります。乳児期~幼児期までの間は、鶏卵、牛乳、小麦などが原因として多く、学童期以降になると、甲殻類(エビ、カニ 等)、ピーナッツ、果物、小麦等によって引き起こされるようになります。

主な症状としては、じんましん、皮膚のかゆみ、腹痛、下痢などが出現します。また、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューの呼吸音)、呼吸困難、強い腹痛や頻回の下痢・嘔吐など、複数の臓器でアレルギー症状がみられる状態をアナフィラキシーといい、緊急治療が必要です。これに血圧低下や意識障害もみられると、アナフィラキシーショックと診断され、命にも関わる状態です。

検査としては、血液検査(血清特異的IgE検査)、食物経口負荷試験(アレルゲンと考えられる食物を少量口にして、症状の有無を確認する)などを行い、診断をつけることもあります。

治療について

まずは原因となる食物は避けるようにします。またアナフィラキシーの症状がみられている場合は、アドレナリンの筋肉注射が必要となります。ちなみにアナフィラキシーを起こす確率が高い患者さまは、アドレナリン自己注射(エピペン)を常に携帯する必要があります。

このほか、口に食することが多く、耐性を獲得することで克服可能な食物(小麦、牛乳、大豆、鶏卵 等)がアレルゲンという場合は、食物経口負荷試験のうえ、少量経口免疫療法を行います。これは、アレルゲンとされる食物を症状が出ない程度の量まで摂取し続け、その量を徐々に増やしていくもので、最終的には耐性獲得までを目指していくという治療法になります。
食物経口負荷試験・少量経口免疫療法をご希望の患者さまは、実施可能な医療機関にご紹介させていただきます。

アトピー性皮膚炎

強いかゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返すようになるのがアトピー性皮膚炎です。早ければ生後2~3ヵ月後には発症するようになりますが、乳児湿疹との区別がつきにくいので、2歳以降になってアトピー性皮膚炎と診断がつくこともあります。

原因に関しては、多くの要因があるといわれていますが、本人がアレルギー体質であること(アトピー素因)や家族歴がある、皮膚バリア機能が弱いといった方に発症しやすいのではないかといわれています。

なおアトピー性皮膚炎は、年齢によって発症部位が異なります。乳児の間は、赤くて湿り気のある湿疹が頭部や顔面を中心に体幹(お腹や背中)、手足などにもみられるようになります。また1歳を過ぎるようになると、顔面や頭部の湿疹は減少し、首回り、腕や膝の屈曲部を中心に発症するようになります。また湿疹の状態もカサカサと乾燥し、その部位は黒ずむようにもなります。

診断に関しては、乳児であればかゆみのある湿疹の繰り返しが2ヵ月以上続いている場合、幼児以降では半年以上続いている場合、アトピー性皮膚炎と診断されます。また必要に応じて、血液検査でアレルゲンを調べる検査などを行います。

治療について

対症療法として、皮膚の炎症を抑制させる効果のある、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を使用します。
基本の対策として最も大切なものは、日頃からのスキンケアです。具体的には、皮膚を清潔に保つ、保湿剤をしっかり使用することが挙げられます。

近年、アトピー性皮膚炎の新しい治療法が登場し、重症の皮膚炎も治療可能になってきました。皮膚炎を起こす免疫物質を抑制する注射薬など、専門医による処方が必要なものもあり、ますので、まずはご相談ください。専門医による治療が望ましい場合は、専門の医療機関にご紹介させていただきます。

花粉症

主に花粉をアレルゲンとしたアレルギー疾患が花粉症です。アレルゲンとしては、スギやヒノキがよく知られていますが、人によって原因となる花粉は異なります。そのため、イネ科の植物、ヨモギやブタクサで発症することがあります。いずれにしても原因花粉が飛散する時期にのみ限定して発症します。

よくみられる症状は、くしゃみ、鼻水・鼻づまり等のアレルギー性鼻炎の症状に加え、目の充血、目のかゆみ、流涙、目の異物感(目の中がゴロゴロする)などアレルギー性結膜炎の症状もみられるようになります。上記以外には、喉にかゆみ、肌が荒れる等が現れることもあります。また、鼻づまりによって眠れない、集中できないということもあります。

診断については、問診や視診でつくことも多いですが、アレルゲンを特定するための検査として、血清特異的IgE検査、皮膚テスト(皮内テスト、スクラッチテスト 等)などが行われることもあります。

治療について

症状の原因・悪化要因の除去として、原因とされる花粉が判明している場合は、それを避けるための環境づくりを行うことが大切です(こまめに掃除や洗濯をする、外出時やマスクや眼鏡を着用する 等)。

アレルギー症状を抑える治療では、薬物療法を行います。具体的には、抗アレルギー薬等の内服薬を使用します。また鼻づまりが強ければ鼻噴霧用のステロイド薬、眼症状については、抗アレルギー薬の点眼薬を用います。

なお花粉症を根治させる治療法として、アレルゲン免疫療法というのがあります。当院では、その中の舌下免疫療法を行っています。

舌下免疫療法

アレルゲン免疫療法のひとつです。これは、アレルギー症状の原因とされる抗原(アレルゲン)を体内に投与し続けることで、体を慣らしていき、同症状を緩和させていく治療法のことです。

スギ花粉もしくはダニがアレルゲンとされる患者さまのみを対象とし、5歳以上であれば治療可能です。なお、両方ともにアレルゲンがあるという場合は、どちらかを選択する必要があります。ちなみにスギ花粉の舌下免疫療法を始める場合は、飛散時期を避ける必要があります。そのためスギ花粉が飛ばないとされる6~12月の間がスタート時期となります。治療期間は3~5年と長期間に及びます。

舌下免疫療法では、アレルゲン(スギ花粉、もしくはダニ)が含まれている錠剤を1日1回で服用していきますが、口内で1~2分程度は馴染ませてから飲み込みます。開始時の錠剤に含まれるアレルゲンは少量ですが、日が経過するに従いその量は徐々に増量し、一定の量まで達すれば、その量を維持して投与し続けます。初回の服用時は、アレルギー反応やアナフィラキシーの出現のリスクを考え、迅速に対処できるよう院内での投与となります。何も異常がなければ、次回以降はご自宅での投与となります。

副作用に関しては、アレルギー反応として、口腔内や喉に腫れやかゆみ、耳にかゆみ、頭痛、吐き気などがみられることがあります。そのほかにもごくまれですが、アナフィラキシーが起きる可能性もあります。

同療法を行うことによって完治する可能性は約2割程度ですが、完治はせずとも症状は改善したという患者さまを合わせると8割近くの方に効果がみられたという報告があります。