小児神経科とは

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主に小児の脳、神経、筋肉等に関係するとされる病気を取り扱う診療科になります。具体的には、熱性けいれんやてんかんの診療を中心に、筋力の弱さや運動発達の遅れ、言葉の発達の遅れ、発達障害等の診察も行います。そのほか、起立性調節障害や、睡眠障害、不登校や心理的ストレスに伴う心身の不調(心身症)についても、遠慮なくご相談ください。

熱性けいれん

子どものけいれんの病気で、一番多いものが、熱性けいれんです。
熱性けいれんとは38度以上の発熱がある際に見られるけいれん発作で、生後6ヵ月から6歳までの幼児(多くは1~2歳)にみられます。ほとんどの場合、小学生以上になると熱性けいれんは起こさなくなります。

熱性けいれんは、発熱が始まってから24時間以内に発生することが一般的です。症状は、意識を失って、全身を固く突っ張ったり、ガクガクさせるような全身けいれんのことが多いです。眼球上転して白目をむく、顔面や口唇の色が悪くなることもあります。通常、発作は2~3分で収まります。
けいれんが5分以上続く場合は、けいれんを止めるための治療が必要になることもあるので、救急車を呼びましょう。
また、けいれんの症状に左右差がある場合、同日に2回以上けいれんを繰り返している場合、けいれんがおさまったあとも意識がなかなか戻らない場合、発熱してから2~3日以上経過してからのけいれん発作の場合は、熱性けいれんではなく、髄膜炎や脳炎など別の病気が原因のこともあるため、受診が必要です。

熱性けいれんは脳に影響を残すことはなく、予後は良好です。

治療について

けいれんが治まっていれば、熱性けいれんの治療を行うことはありません。
熱を出すたびに熱性けいれんを起こしやすいお子さまの場合は、ダイアップ坐剤(抗けいれん剤)で、けいれん予防の対応をします。

てんかん

大脳皮質ニューロンにおいて過剰興奮が引き起こされ、それによって意識障害やけいれんがみられる状態(てんかん発作)が2回以上繰り返されているとてんかんと診断されます。全年齢で発症しますが、乳幼児や若年世代に起こりやすいとされています。

発症の原因については、いくつもあるとされています。ただ大きくは病因が特定される(症候性)てんかんと素因性てんかんに分けられます。前者は発症の原因として何かしらの疾患があって起きるとされるものです。一方の後者は、検査(頭部CT、MRI 等)をしても異常がみられないものになります。

全般発作と焦点発作

てんかん発作の症状に関しては、全般発作と焦点発作(部分発作)の2種類に分けられます。

全般発作は脳のほぼ全体が興奮してしまっているので発作開始時からほぼ意識消失しています。意識消失以外では、全身が固くこわばったり、またガクガクする状態(けいれん)がみられます。その際に口唇や顔面が真っ青になったり、泡状の唾液が出る、失禁、転倒等が起きることもあります。発作時間は多くは5分程度とされ、その後は睡眠、もしくは朦朧としているケースが大半です(強直間代発作)。
初めて上記の状態になった場合や、5分以上続く場合は、救急車を呼んで下さい。

全般発作は、そのほかにも全身もしくは身体の一部がピクンと瞬間的に動くミオクロニー発作があります。発作が短時間なので意識障害の自覚がないこともあります。また、意識消失がいきなり始まって、突然終わる欠神発作があります。発作は数秒から長くても数十秒なので周囲にも気づかれにくいものです。

そのほか、小児で見逃せないてんかんに、点頭てんかん(ウェスト症候群)があります。点頭てんかんは、その名の通り「うなずく」動作が特徴的で、生後3ヶ月~10ヶ月程度の乳児に発症するてんかんです。突然に頭を前に傾ける(点頭)動作や、体を折り曲げてお辞儀をする、両手を上げるといった動作が1~数秒持続します。その短い発作が数秒から数十秒の間隔で何度も繰り返されることがあり、これをシリーズ形成と呼びます。発作は入眠前や覚醒直後などの眠いタイミングに発生することが多いです。てんかん発作とは気づかれにくいため、見逃されやすく、治療が遅れることがあります。
治療しないと発達の遅れや難治性てんかんにつながることがありますので、疑わしい場合は、すみやかに受診して相談してください。

焦点発作に関しては、脳の一部に限定して過剰興奮が起きている状態です。したがって発症がみられている部位によって症状も異なります。意識消失することもあれば、しないこともあります。ほかに、手や顔のこわばり、けいれん、実際にはないとされるものが見える、聞こえるといった症状や、口をもごもごさせる、手足をモゾモゾ動かす等の症状を伴うこともあります。

てんかん発作は受診時にはおさまっていることが多いので、可能なら動画を撮影して、診察時に見せていただけると、判断の大きな材料になり、ありがたいです。

検査について

診断をつけるための検査としては、てんかんに関係した異常な脳波がないかを調べる脳波検査、脳に器質的な異常があるかを確認する画像検査(頭部MRI、CT 等)、血液検査などを行います。

治療について

てんかんの種類(全般発作、焦点発作)にあわせた、薬物療法(抗てんかん薬の内服)が中心となります。全般てんかんであればバルプロ酸、焦点てんかんであればレベチラセタムなどが用いられます。

また薬物療法だけではてんかん発作が抑えられない場合は、食事療法(高脂質、低糖質な食事(ケトン食)には、てんかん発作を軽減させる効果があるとされる)や外科治療(焦点切除術、脳梁離断術、迷走神経刺激療法など)が選択されることもあります。
当院の薬物療法でてんかん発作を抑制できない難治の場合や、外科治療が必要と判断される場合は、治療のできる専門医療機関にご紹介させていただきます。

発達障害

脳機能の発達に関係している障害で、発達特性により、コミュニケーションや学業、日常生活や集団生活等に支障をきたす状態を発達障害といいます。多くは幼児期にその特徴が現れるようになります。主な種類としては、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(学習障害、LD)があります。にこれら発達障害は境界が非常にあいまいで、重複することも少なくないです。それぞれの特徴は次の通りです。

自閉スペクトラム症(ASD)

これまでは広汎性発達障害と呼ばれていました。コミュニケーションに異常がみられる(周囲に興味を持たない、アイコンタクトが苦手 等)、興味が限定される(限られたものにだけ強い関心を抱く)、特定の行動パターンを繰り返す、特定の感覚を極端に嫌がる(感覚過敏)といった特徴がみられます。以前は、言葉発達が遅れているのであれば自閉性障害、言葉の遅れが無い場合をアスペルガー障害と分類していました。現在は、これらをひとつにまとめて自閉スペクトラム症(ASD)と診断します。発症の原因は特定されていませんが、遺伝的要因などの多因子が関係しているのではないかと言われています。

なおASDの有病率は世界的には約1%、日本の5歳児では3.2%という報告があります。適切な支援を受けるためにも早期に発見することが望ましいとされていますが、多くは1歳半頃からASDの特徴がみられるようになります。以下のような症状がみられる場合は一度ご相談ください。

  • 他人との関りを持ちたがらない
    (視線を合わせようとしない、他の人が指を差した方向を見ようとしない 等)
  • 人の気持ちを理解しようとしない
  • 言葉が遅れている、話したがらない
  • 同じ遊びを飽きずにいつも繰り返している
  • 体を揺らす、手を回す等、帯同行動が目立つ
  • 好き嫌いが激しい
  • 感覚が過敏、もしくは鈍感(感覚異常) など

検査について

ASDの診断にあたっては、問診や行動観察、知能検査等で発達特性を評価し、必要であれば血液検査、生理学的検査、画像検査などを行い、判断します。

治療について

ASDに関しては、お子さまの特徴や生活の中の困っているポイントを把握しながら、その時に必要な療育や環境調整を行っていきます。療育では、本人ができることをひとつずつ行っていく、対人関係をスムーズにするためのソーシャルスキルを学びます。環境調整では、やらなければならないことを整理して単純化する、図で示すことで視覚的にもわかりやすくするといった工夫も行っていきます。また保護者等、周囲の人たちもそのお子さまの特性を理解し、そのうえで接し方を学んで工夫していくことも大切です。
ASDのお子さまは、好きなことに対する集中力は秀でており、知識や技術を高める力をもつという長所もあります。得意なことを自信にかえて、自己肯定感を育みながら成長していくことを目指したいものです。

注意欠如・多動症(ADHD)

注意欠如や多動性・衝動性がみられることで、社会生活において支障をきたしている状態が注意欠如・多動症(ADHD)です。有病率は学童期で5~7%です。

よくみられる症状としては、不注意に関しては、忘れ物やケアレスミスをしやすいということがあります。また自身の興味が湧かないものには集中が困難、片付けが苦手、物事を途中で投げ出してしまいやすい等も見受けられます。多動性・衝動性では、じっとしていられない、手足をぶらぶら動かす、席を立って歩き回る、順番を待つのが苦手、人の話が終わらないうちに話し出すなどの行動がみられます。ちなみに多動性・衝動性については、成長するにしたがって落ち着くようになります。
ADHDのお子さまの長所として、困っている人にすぐに気づき、いち早く手を差し伸べることができる、発想力が豊かでアイデアを提案するのが得意、などがあります。

検査について

問診や行動観察等で、上記で挙げた症状や行動が半年以上みられ、それによって日常生活や社会生活に支障をきたしているとなれば、ADHDと診断されます。このほか、血液検査、知能検査を行うこともあります。

治療について

まずは環境調整やソーシャルスキルトレーニングなどが中心となります。環境調整とは、物事に集中しやすくする環境づくりです。具体的には、気が散りやすい物などを周囲に置かない、複数ではなく、ひとつの物事にだけに絞って作業を行わせることで集中させやすくするといったことです。また、ソーシャルスキルトレーニングでは、社会生活において適切とされる行動を訓練したり、感情コントロールの練習なども行います。
上記以外にも、ADHDのお子さまの特性対する周囲の理解や協力も不可欠で、保護者がその対応方法を学ぶペアレントトレーニングも有効です。
また医師が必要と判断した場合は、症状をコントロールするための薬物療法として、コンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセ等を用いることもあります。
当院では、コンサータ、ビバンセの処方も可能です。
叱られる場面も多いADHDのお子様には、周囲の正しい理解のもと、本人の努力や得意なことに対しては適切に良い評価を伝えて、自信をなくさないように成長を支えることが、二次障害を予防するうえで大切です。

限局性学習症

限局性学習症は学習障害(LD)ともいわれます。知能は正常であるものの、特定の学習(読み、書き、計算 等)において困難が生じていることで、学習の習得が年齢相応のレベルに到達していない状態にあると学習障害と診断されます。学習障害の種類としては、文字を正しく読むことができないとされる読字障害、文字を正しく書けない、書いても間違えていることが多い書字障害、簡単な暗算や習得したはずの算数の応用が困難となっている算数障害があります。
学齢期における学習障害の有病率は、世界的には5~15%、日本では知的障害のない小中学生の6%以上が学習面で著しい困難を示す、と報告されています。

検査について

学習障害の診断には、まずひとつ以上の学習困難(読字、書字、算数 等)が半年以上に渡って続いている状態があり、さらに知能検査の結果、知的な遅れがない場合に学習障害ということになります。

治療について

困難があるとされる学習について、指導方法を工夫するなどして困難感を減らしていきます(合理的配慮)。例えば読字障害であれば、文字を大きくする、見やすいフォントにするなどして読みやすくする、声を出して読む(音読)などします。書字障害では、文字の形が覚えられなければ、なぞり書きができるノートを使います。また文字のバランスが悪ければマス目のあるノートで書くなどしていきます。算数障害につきましては、お子さまにとって、数の理解や計算がしやすくなる方法を見つけ出すことが大切です(物を使って、数や数字をイメージしやすくする 等)。またできている計算については褒めるなどして自信をつけさせるということも重要です。
学習方法の専門的な指導は、小中学校の通級指導教室で受けることができます。所属の学校の先生にまずはご相談ください。