小児の感染症とは

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感染症とは、ウイルスや細菌等の病原体が体内に侵入(感染)し、それによって何らかの症状がみられている状態をいいます。感染経路については、感染者に直接触れることで感染する接触感染、感染者のくしゃみや咳等のしぶきを吸い込んで感染する飛沫感染、空気中を漂流する微細な粒子を吸い込んで感染する空気感染、病原体に汚染された食物や水を口にすることで発症する経口感染があります。

なお小児科を受診される半数以上の患者さまが感染症とも言われています。なかでも生後3ヵ月未満の赤ちゃんは、免疫機能が未熟なため重症化しやすいという特徴もあります。このようなことから小児は感染症に罹患しやすく、その種類は様々あります。
小児がかかりやすい代表的な感染症には、以下のようなものがあります。

RSウイルス

RSウイルスに感染することで発症する感染症です。飛沫感染や接触感染を通じて広がり、感染後、2日から8日間の潜伏期間を経て症状が現れます。1歳までに半数以上の子どもが感染し、2歳までにはほとんどの子どもが一度は感染すると考えられています。

主な症状には、発熱、鼻水、咳など風邪に似た症状が見られます。特に6ヶ月未満の乳児が感染した場合、重症化することがあり、咳が悪化したり、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)、呼吸困難が生じることがあります。細気管支炎や肺炎を引き起こす可能性もあります。

治療について

RSウイルスに特効薬はありません。症状に合わせた対象療法となります。熱や痛みがあるという場合は、解熱鎮痛薬を使用する、苦しそうに呼吸をしている場合は、吸入薬や去痰薬を使用します。乳児で重症化した場合は、入院治療が必要になることもあります。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスに感染することで発症する呼吸器感染症で、冬から春の季節(12月~3月)にかけて罹患することが多いです。主な感染経路は飛沫感染や接触感染で、1~2日の潜伏期間を経てから発症します。よくみられる症状としては、発熱(多くは38度以上)、ゾクゾクとする寒気(悪寒)、頭痛、関節痛、全身の倦怠感があります。少し遅れて、咳、鼻水、喉の痛み等の呼吸器症状も出るようになります。なおインフルエンザでは、ときに熱性けいれんを合併しやすく、重症化してしまうと肺炎やインフルエンザ脳症(小児の場合)を併発することもあります。

治療について

多くの場合、ご自宅にて安静、対症療法による薬物療法(解熱鎮痛薬 等)によって治まります。発熱は発症から3日程度、そのほかの症状も1週間程度で落ち着くことが多いです。なお発症後48時間以内であり、重症化するリスクが高いと判断された場合は、抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ吸入、イナビル吸入 等)を投与します。

保育園や幼稚園、小学校につきましては、発症後5日が経過し、なおかつ解熱後2日(幼児は3日)が過ぎるまでは出席停止となります。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

正式な病名は流行性耳下腺炎で、3~6歳の幼児が発症しやすいといわれています。ムンプスウイルスが原因で、飛沫感染もしくは接触感染によって引き起こされるようになります。多くは2~3週間の潜伏期間を経て発症します。

主な症状は、発熱、耳下腺(耳の下の頬の部分)の腫脹(両側もしくは片側)と同部位の痛みなどです。発症後、48時間までが腫脹による症状の山場で、腫れについては1週間程度で治まるようになります。

また合併症として、無菌性髄膜炎、難聴、膵炎などを併発することもあります。思春期以降におたふくかぜに罹患すると、精巣炎(男子)や卵巣炎(女子)を併発する可能性があります。

治療について

特効薬はありません。基本は対症療法です。例えば、熱や痛みがあるという場合は、解熱鎮痛薬を使用するなどして、症状をやわらげるなどしていきます。あとは安静にすることで、1~2週間程度で治癒するようになります。ちなみに耳下腺の腫れが現れてから5日が経過し、さらに全身の状態がよくなったというまでは、出席停止です。

水ぼうそう(水痘)

感染力が非常に強い水痘帯状疱疹ウイルスが原因です。主に空気感染が感染経路で、2週間程度の潜伏期間を経て発症します。2~8歳の小児に起きやすく、発熱(3日程度で治まる)に伴って、皮膚にかゆみのある紅斑が頭皮や顔面、体幹に出現します。これが瞬く間に手足など全身に広がり、皮膚症状も赤いブツブツから水ぶくれ、かさぶた(痂疲)と時間の経過と共に変化していきます。かさぶたが剥がれると完治ということになります。ちなみに全身の皮疹が完全にかさぶた化するまでは、登園や登校をすることはできません。

なお同ウイルスは、皮膚症状等が治まった後も体外へは排出されずに神経節に潜伏し続けます。その後は成人後になりますが過労や加齢等による免疫力の低下などによって、一部の神経領域に沿ってズキズキした痛み、紅斑や水ぶくれ、痂疲といった皮膚症状が現れることがあります。これを帯状疱疹といいます。

治療について

対症療法が中心となります。具体的には、患部を清潔にして、外用薬を塗ります。重症化するリスクがあると医師が判断した場合は、抗ウイルス薬を使います。
ちなみに全身の皮疹が完全にかさぶた化するまでは、出席停止です。

手足口病

コクサッキーウイルス(A群)もしくはエンテロウイルス等が原因の感染症で、夏の時期の乳幼児によくみられます。感染経路は、飛沫感染もしくは接触感染で、3~5日の潜伏期間を経てから発症します。主な症状は、手のひらと足の裏にみられる小さな水疱、口腔内の前方に現れるとされる水疱です。また38度以下の発熱が出ることもあります。なお手足の水疱には、痛みやかゆみはみられません。ただ口内の水疱については、破れることで痛むということはあります。

治療について

これといった治療をしなくても自然と治癒します(一週間程度)。そのため、治療が必要な場合は対症療法となります。例えば、口の中の水疱が口内炎のような痛みがあれば、軟膏を患部に塗布するなどします。

ヘルパンギーナ

主にコクサッキーウイルスが原因とされ、飛沫感染もしくは接触感染によって引き起こされます。手足口病と同様に夏季に発症しやすく、乳幼児の患者さまが多いです。主な症状は、2~4日の潜伏期間を経てから、39度以上の発熱、口腔内の後方に水疱、アフタも現れるようになります。発熱は3日程度で治まりますが、水疱が破れて潰瘍化すると、喉に強い痛みがみられるようになります。そのため、喉の痛みから水分をとるのを嫌がるなどして脱水症状に陥るということもあるので注意が必要です。

治療について

原因ウイルスに効くとされる特効薬はありません。対症療法で乗り切ります。熱や痛みがあれば解熱鎮痛薬を使用します。また喉に痛みがあるので、食事は刺激が少ないもの(味が薄い、軟らかい 等)にしましょう。そのほか水分をこまめにとらせることも必要です。水分や食事が十分にとれない場合は、点滴療法を行うこともあります。

溶連菌感染症

主にA群溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌によって引き起こされる感染症です。飛沫感染または接触感染を通じて広がり、通常2~5日の潜伏期間を経て症状が現れます。
初期の症状としては、喉の腫れや痛み、38~39度の発熱(発熱しない場合もあります)、リンパ節の腫れが一般的です。幼児の場合、腹痛や嘔吐が見られることもあります。その後、舌に赤い斑点が現れる(イチゴ舌)ほか、全身に軽度のかゆみを伴う赤い小さな発疹が出現することがあります。

治療について

抗菌薬(ペニシリン系)を内服します。1~2日程度で症状は良くなりますが、医師の指示通りに飲み続けてください。10日程度服用することが多いです。
合併症として急性腎炎を発症することもまれにありますので、処方された抗菌薬はきちんと飲みきることが大切です。

咽頭結膜熱

咽頭結膜熱とは、アデノウイルスの感染により発症する感染症であり、飛沫感染、接触感染により広がり、潜伏期は5~7日です。夏場はプールを介して感染することも多くプール熱と呼ばれることもあります。アデノウイルスには複数の型があり、咽頭結膜熱を起こすのは3型、4型、7型、11型などです。
主な症状は、発熱(39度程度の高熱)、咽頭炎(喉の腫れ、痛み)、結膜炎(目の充血、目やに、目の痛み 等)で、3~5日程度続きます。

治療について

特効薬というものはありません。治療は対症療法が中心となります。熱や痛みがあれば解熱鎮痛薬を使用します。結膜炎があれば点眼薬を使用します。脱水症状を起こさないように水分をこまめにとらせることも必要です。

ウィルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)

ウイルス性胃腸炎は「おなかのかぜ」「はきくだし」「嘔吐下痢症」様々な呼ばれ方をしており、ロタウイルス・アデノウイルス・ノロウイルスなどのウイルスが胃腸にはいることで胃腸の働きが悪くなり、急に吐き出したり、下痢をしたりします。主に感染者の嘔吐物や便が空気中に拡散しそれを吸い込む、同ウイルスに汚染された食品を摂取することによって感染が広がります。感染力は非常に強く、潜伏期間は半日から2日程度です。
主な症状は、嘔吐と下痢です。半日くらいの間に何回も嘔吐を繰り返すことが多いですが、1日1~2回くらいの嘔吐が2~3日続く場合もあります。嘔吐に続いて下痢が見られることも多く、3日~1週間位続きます。発熱はあまり見られませんが、時に高熱を伴うこともあります。

治療について

特効薬はありません。治療の中心は、対症療法となり、脱水を防ぐためのこまめな水分補給が大事です。経口補水液などを少量ずつこまめに飲むようにしましょう。嘔吐した直後は飲んだり食べたりせずに安静にし、胃腸を休めるようにしましょう。

非常に感染しやすく、家族内感染も珍しくありません。嘔吐物や下痢にはウイルスが多く存在し、そこから感染が広がることが多いため、ご家族の方がそれらを処理するときは手袋・マスク・ゴミ袋などを使って、ウイルスへの接触をできるだけ減らし、感染しないように予防することも大切です。また、汚染した物の消毒には、アルコールは効かないため、次亜塩素酸ナトリウムで消毒する必要があります。

子どもの新型コロナウィルス感染症

新型コロナウイルスによって引き起こされる病気が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)です。空気感染、飛沫感染、接触感染などの経路を通じて広がり、潜伏期間は通常2日から7日程度です。
初期の症状は風邪に似ており、発熱、鼻水、鼻づまり、咳、喉の痛みなどが見られます。軽症の場合、症状は約1週間で改善することが一般的です。小児においては、重症化のリスクは比較的低いとされていますが、小児喘息など基礎疾患を持つお子さまの場合は重症化する可能性があります。特に小さなお子さまは、自ら症状を訴えることが難しいため、注意が必要です。

治療について

現時点で特効薬はありません。対症療法として、解熱鎮痛薬や咳止めの薬が処方されることがあります。小児の場合、軽症で済むことが多いので、対症療法と安静に過ごすといったことが中心となります。